リスクとどう向き合うか - 金融リスク最前線 - 2/5
- There is no such thing as a free lunch!! (タダ飯なんてない!!) -
スーさん: 特に中国の銀行ではいま「リスク」に対する考え方が全然進んでないからね。もともとリスクをマネジメントするという言い方も最近のことば。おそらくまだ10年もたってないと思うけれど… 中国ではようやくそれが使われだした。特に、銀行の世界ではバーセル銀行監督委員会というのがあって、リスクのとり方に関するガイドラインを定めてるの。中国の銀行もそれに従わなければいけない。
小椋: バーセル委員会のガイドラインに沿って、リスクの取り方を決めるんだ。
スーさん: そう。私はそのガイドラインを、中国の銀行にあてはめていってる。それが今の仕事。
小椋: 中国の銀行も、世界標準にあわせようとしてるんだね。
スーさん: そういう世界標準をクリアにしないとそれこそ信用性に関わるからね。
小椋: 銀行は、何をリスクと思ってそれにどういう対処をしていってるの?
スーさん: んー たぶん、学の思っているリスク管理と私がしているリスク管理とはちょっと違うかもしれないけれど。私が仕事としているリスク管理といえば… たとえば、住宅ローンってあるよね。
小椋: あるね。サブ・プライムローンでも騒がれた。
スーさん: その住宅ローンだけれど、その住宅ローンの金利ってどうやって決まるか知ってる?
小椋: 日本はたしか10年満期国債が目安になるって聞いたけれど、海外は違うんだよね。
スーさん: アメリカも香港も、LIBOR(ライボ)っていう基準金利で決まるんだ。
小椋: あぁ、ブルーム・バーグを見てると下にちょこちょこ出てくるやつね。いわゆる銀行が銀行に貸すときのレート。
スーさん: 日本の長期国債の金利が上下するように、LIBORも上下する。そんで住宅ローン金利はLIBOR+何%という決め方をしてるのね。それでアメリカなんかでは住宅ローンを組むと2/28(ツー・ツエンティエイト)すなわち最初の2年固定金利で残りの28年を変動金利にするのがふつう。そうなると、最初の2年固定にするわけだから、ローンを組んだ瞬間のLIBORのレートがローンを組んだ後、上がったりしたら、銀行は借り手から2年間同じ金利をもらう一方、LIBORの金利上昇分をカバーできなくなるかもしれない。
小椋: LIBORが上がれば、どこかの銀行に余分に返さなければいけないからね。
スーさん: そう。そのLIBORレートが変動するリスクを無にするために、先物ヘッジをかけておく。
小椋: 先物ヘッジというと、LIBORレートが将来どうなろうと、これこれのレートで取引します、っていう約束ね。
スーさん: そう。仮にLIBORレートが将来上がっても、約束したレートで取引できるから銀行にはメリットがある。逆にLIBORレートが下がったら、銀行としては損しちゃったってことになるけれど、「得する機会を失うかもしれない」欲求より「損したくない」っていう気持ちのほうが大きいわけ。この場合。
小椋: 「儲かるかもしれないが損するかもしれない」っていう不確実性を「ちょっとしか儲からないが確実なもの」に付け替える作業が、スーさんの仕事。
スーさん: そう。銀行は、どこかからカネを調達してきてどこかへカネを流し、そのサヤを抜くのが商売。どこかからやってくるカネはタダでは借りれない。タダ飯なんてないってことね。そのカネ貸し代が変動するから、その変動から来る不確実性にどう対応するかが私のやってるリスク・マネジメント。
続く

