賄賂文化は消えるのか

2010/07/21 23:16
賄賂文化は中国に浸透し過ぎているので、今更賄賂が悪いことだと言われてもピンと来ないらしい。しかしこの賄賂文化は確実に中国が成長するための足かせとなっている。

北京が強力な賄賂防止政策を採用してはや10年になる。前全人代の副議長が5億4000万円相当の賄賂を受け取って死刑となったり、昨年は上海の高級官僚が1億元の収賄で逮捕されたり。

中国では役人になると、むしろ「どれだけ賄賂をもらって私腹を肥やすことができるか」が評価されたりする。そしてお札の枚数と同様、愛人の数を競ったりする。

日本人から見れば異文化である。しかし中国ではリアルである。その中国で現在進行形で問題になっていて、しかも今後問題はさらに大きくなるだろうなと思うのは官僚への賄賂ではなく、商業賄賂だ。

日本と違って、中国では商業賄賂は違法である。たとえばハーベスライフ社が中国のチャイナライフ(仮名)社にコンサルのサービスを提供したいとする。しかしコンサルを提供するためにはコンペを勝ち抜かなければならない。そのコンペを甘めに採点してもらうためにチャイナライフ社の社長に幾許かの賄賂を渡す…

接待というレベルではなく実弾すなわち現金を伴った時点でアウト。

贈賄側(ハーベスライフ)も収賄側(チャイナライフ)側もタレコミがあれば捕まる。これが商業賄賂。公務員でしか贈収賄罪が発生しない日本では商業賄賂の考え方が薄いが、中国の会社は露骨に要求してくる。

賄賂のことをよく「アンダーテーブル」というが中国の場合まさにアンダーテーブルで賄賂の額が決まる。私が数年前に同席した会合で、中国の女性が男性を歓待するいわゆる「カラオケ」に同行した際に突如A会社のトップが女性を部屋から追い出してB会社のトップとコソコソ話をし始めた。

(女性が聞いたら激怒するだろうが、中国ではなぜかビジネスの具体的な話し合いは会議室ではなく若い女性がいるカラオケルームで行われるのだ。しかもボソボソと話すので要領を得ず、メモを取るという不粋なことも出来ない。しかし歓待を受けるので一応嬉しそうにしなければならず、時には女性を指名しなければならない。女性性の商品化は日本より中国のほうが先鋭的だ)

話し合いはものの10秒くらいで終わり、後から「何を話していたのですか?」と聞くと「賄賂の額だよ。今回は100万人民元(1500万円)」と事もなげに言ったのには驚愕したものだ。

授受は電信送金ではなく受贈者の賄賂のことを中国語の隠語で「ミィミィ(密密)」と言うが誰が誰にいくら贈るかは秘密であるが賄賂文化そのものは公然である。そもそもそんな隠語が人口に膾炙している自体異常だ。

「そういうもんか」と割り切れれば中国でビジネスを始めるのに気楽だが、少し規模の大きい会社になると実弾としてのキャッシュをどう準備するのか、あるいはいくら必要なのか、どういう効果があるのかが不透明なので決済が下りない。

本社のナンバー3くらいが中国に乗り込んでいって大胆にビジネスをするのであればまだしも、駐在事務所レベルで中国に張り付いているだけではまともな仕事は出来ないのが現実だ。

それが日本や諸外国と違うところで、駐在事務所員がマーケットリサーチから入り、本社から少しずつ裁量を得てビジネスをしていくパターンでは立ちいかない。

中国政府は早くから道徳的動機ではなく経済的動機でこの賄賂文化を消滅させるべく努力はしている。ただ、それが根絶されることは上述の社長の賄賂授受の素面加減からみて当分ありえない気がする。