年初三

2010/02/16 23:12
相方に「お正月番組はあるのか、たとえば紅白とかゆく年くる年とか」と聞いたら「紅白らしきものはある。中国の民族ごとの、昔から語り継がれる歌謡をひたすらど派手に歌うやつ。でもゆく年くる年はない」とのこと。

「ど派手とは、日本の紅白の小林幸子ほどか」

「いや、そこまでど派手じゃない。衣装はたしかに派手でパステルカラーの生地だったりするが、人数がたくさん出てくる。20人とか30人とか。それでみんな民族の踊りと歌を歌う」

「では君の出身の広東省の歌を歌ってみてくれ」

「知らない」

「なら何でもいいから一曲歌ってくれ」

「いや、一曲も知らない。いわゆる牧歌、農耕歌だから。チャイニーズ・オペラの曲やポップスも合間に歌われることがあるが、それがメインではない」

「お笑いもあるのか」

「ある。常連の芸人がいて日本の芸人ほど扱いが下ではないと思う。作り込みが完璧なのと、日本のようにボケとツッコミで笑わせるのではないから日本人には笑いのツボがつかみにくいのではないか」

「ちなみに君はボケとツッコミの笑いが分かるのか」

「分からない。今でも理解出来ない。アンタがネットでお笑い動画を見て爆笑しているのを見て『自分も笑ってみたい』と思う。が言葉が速すぎて理解できないのと、理解出きてもツボが分からず今も苦労している」

「これがあるとお正月が来たなーと思うものは何か。ちなみに小椋の家では数年間年越しソバにのせる海老天が近所のスーパーで買ってきたものだったので、今でもスーパーに売ってるような油のまわった衣だけが分厚い安物の海老天を食べると『すわ、正月か』と構えてしまう」

「何かを食べて、とか何かをして正月気分になることはないが強いて言うなら悪い天気と父親の料理か。旧正月にはいると判を押したように天気が悪くなる。あと旧正月中はおおみそかから今日までずっと父親が料理をしている。客人にふるまう茶も父親が入れる。母親は基本的には正月は料理をしない。ちなみにアンタの『すわ』の用法は正しくないと思う。」

「父親が厨房にはいっていろいろとするのは中国の伝統か、あるいは君の家庭独特の習慣か」

「広東省や上海のほうでは男性が料理するのは当然だ。レディーファーストというよりは、母親は子育てをするので単に役割分担的な発想からそうなっているのだと思う。だから父親が厨房に入っていろいろとするのは私の家だけではない。中国の男性は料理がうまい。香港はイギリスのレディーファーストがやや歪んだ形で拡大再生産されているので男子厨房に入るべしというのとは趣旨が異なる。アンタにもガンガン厨房に入ってもらうことを望んでいる。亭主関白な男と結婚した覚えはない」

「おせち料理はあるか」

「それらしきものはある。ただ日本のおせち料理のように料理とその由来が一致しているものばかりではない。たとえばお正月にはアワビやフカヒレなど高級食材を使うがそれはいわれがあるというよりは単にお正月気分に花を添える程度にすぎない」




たしかに、相方のお父様は朝からスープの仕込みをし、昼ご飯を家族全員にふるまった後に買い物に出掛けて肉や魚、野菜を仕入れてまた4時頃から厨房に入って料理をしておりました。

作って下さる料理はたしかにどれもアッサリ味でおいしく、恐れ入りましたというほかないものばかりでしたね。僕は作る方面では役立たずなのでもっぱら食前食後の皿洗い担当でした。したがって男性がずっと厨房にいるという日本では見慣れない光景で。

「ゆっくりしたい」というお正月もあるのでしょうが、お父さんと一緒に厨房に入って料理を出して皿を洗って3日間過ごすとある種の達成感がありました。私にとってはこれもまた、香港のお正月の醍醐味。