K1ファンド 解約制限&新規契約打ち切り

2009/06/24 02:25
CTA関連はボラティリティが大きくなるからポートフォリオには組み込まなかった

半年前くらいにK1ファンドのポートフォリオ・マネージャは私にそう話した。2008年11月、CTAファンドが債券・株式・商品などすべての投資対象の中でスーパースターとなっていたときだ。

私はK1ファンドの低ボラティリティ戦略には同意はしていたものの、10月のように株式・ドルこれだけ下落トレンドがはっきりしてトレンド・フォロー型戦略(CTA戦略)がうまくいっているのにどうしてCTAを入れないのか疑問に思ったからだ。

今思えば、それがK1ファンドのアダとなったのかもしれない。K1は低ボラティリティ戦略と引換えに流動性を失った。

4月の下旬にK1から1通のレターが届いた。解約制限を知らせるレターである。

11月ごろから急にヘッジファンドの解約制限が発生していた。それまでも解約制限が出ている、あるいはファンド自体を解散してしまうものもあり、ヘッジファンド業界全体を脅かしていた。

T+?問題

「ヘッジファンドの流動性が非常に悪くなっている」

年末、「次のリーマン」を見る前に投資家は全資金を逃避させるべくヘッジファンドを次々と解約しようとした。

一部のヘッジファンドが運用対象としている原資産はABS-CDOなど、取引所取引ではなく相対取引である。取引所があって、ザラ場があって、板が立ち… ではない取引は「正当なプライシング」が難しい。

解約するためには現金がいる。現金を作るためにはモノを売らなければならない。みんな売ろうとしているものは、需給バランスが崩れているから買い手は思いっきり安く買い叩くか、そもそも買わない。

売れなければ、すなわち買われなければファンドは現金を手元に用意できない。現金を用意できなければ解約の要請にこたえることができない。

解約申請をしてから実際の解約金が用意されるまでかかる日数は、T(トランザクション)+何日というかたちで表示される。

T+30であれば解約申請をしてから30営業日までに解約金が用意される。

ヘッジファンド目論見書にはT+45とかT+60とか書かれていたものが、次々とT+90、T+120に変更するという知らせが届いた。

しかし状況は悪化するばかり。T+何日と延長したヘッジファンドも、今度は次々と「解約制限」を打ち出した。解約制限はすなわち、「解約を受け付けない」ということだ。

今年の2月ごろ、K1ファンドと打ち合わせを行った際にポートフォリオ・マネージャは「解約制限が多数出ているので、より現金化につとめ、コンサバティブなポートフォリオにするよう努めている」というにとどまった。

その時点で、すでに解約制限が将来出るであろうことはマネージャは頭では分かっていたはずだが、解約制限のことについては触れなかった。

また、以前であれば1日以内に返信されてきた真面目な従業員の事務的なメールの返信がだんだんと遅くなっていた。投資家のK1への解約要請とその対応に追われて大変であろうことが、メール返信の遅さを通じて伝わってきた。

ダイヤモンド入りのゴミは、ゴミ箱行き

今年の1月ごろにちょうどK1の解約が私のお客様からも発生し、対応に苦慮した。K1の解約にかかる日数はおよそT+60。ファンド目論見書には、解約届けを提出した月の時価総額が決定してから30営業日以内ということだった。

が、ファンド・オブ・ヘッジファンドであるK1は解約制限が出ているファンドが原資産中にもあったのだろうが、解約制限は出さないまま時間が4月中ごろになった。

1月に解約届けを提出したのでそろそろ指定の銀行口座に振込みがなされているはず… と解約した顧客には説明したものの、顧客が口座を確認しても振込みはなされていない。

K1に何度も電話をし、メールをし、ファンド目論見書に記載されている事柄と異なるとして説明を要求したがマネージャからは「確認する」の一点張りで拉致があかない。

2週間ほど経過し、前述のようなレターが一斉配信された。

流動性が悪い資産を切り離し、流動性がさほど悪くないものを別途評価する「サイド・ポケット処理」がK1ファンドの原資産たるヘッジファンドでも行われているという。

サイド・ポケットには要するに誰も買ってくれないようなゴミ資産が詰め込まれる。流動性がないので適正に評価することは難しい。

ゴミに値段をつけろと言ってもそれは無理な相談だからである。しかし、ゴミの中にダイヤが入っていることがたまにあるのでそれを目当てにゴミを買う猛者もいる。

サイドポケットに流動性を供給する買い手は、よほど景気が回復しないと現れないだろう。

K1は今年、6.47%のリターンをあげている(USD建)。おそらく、こののんびりとした数字は当分続くだろうが、1年で10%程度を期待するのがせいぜいであろう。

今のところ、K1ファンドはその戦略を大幅に変更する予定はなく、このままコンサバティブなポートフォリオを組み続けるとういことである。

ファンド・オブ・ヘッジファンズの未来

K1ファンドはポートフォリオ総体を原資産として3倍のレバレッジをかけている。レバレッジをかけているからこそ、原資産のポートフォリオ総体のボラティリティが高くなることは許されなかった。

しかし、K1がレバレッジ・ファイナンス・サービスを受けていたバークレイズなど主要銀行が相次いでヘッジファンド・サービス部門を閉鎖した。

ヘッジファンドはレバレッジ・ファイナンスを受けられないだけではなく、プライム・ブローカレッジ・サービスも受けられなくなってしまっている。

ファンドとしての構造体が複雑な、ファンド・オブ・ヘッジファンズであればなおさら与信レベルは最初から低い。

「信用」が世界的に創出されすぎて、それが破裂した今、銀行はシンプルで安全性の高いものにしかカネを貸さない。

結局、ファンド・オブ・ヘッジファンズは米クリントン政権時代から続く過剰流動性の賜物であったわけである。流動性の低い資産でも、リスクをとれるカウンター・パーティがどこかに存在すると信じることができたからこそ存在しえた。

現状、K1のようなCTAを取り入れずに運営しているファンド・オブ・ヘッジファンズは苦戦している。逆にHSBCオルタナティブ・インベストメントが組成するアドベント・ヘッジのようなCTA主体のファンド・オブ・ヘッジファンドは預かり総額をさらに増やしている。

トレンドとしては、このようなCTA主体のファンド・オブ・ヘッジファンドは残っていくだろうが、K1のような戦略のヘッジファンドは、今後新しく生まれてこないかもしれない。

じゃ、どうする

現にK1ファンドに投資している人は、K1がコンサバティブな投資方針を継続している限り、焦って解約する必要はないと思う。

今後起こりうるパターンとしては、

① レバレッジ供給元が見つかり、以前の状態に戻る
② レバレッジ提供元が見つからず、低空飛行を続ける
③ ファンドを解散するつもりで、現金化できるものをすべて現金化し、投資家に還元し、残りの現金化できない部分を6ヶ月~24ヶ月かかって投資家に償還していく

ということになろうか。またK1から新しい報告が入り次第、現投資家には一番に報告させて頂きます。