香港金融譚
主に世界の金融や経済情報についてのブログです。
2011/12/04 23:25
なんとなーくクルマが欲しくなってきたな、それもトヨタのクルマが… と週末、香港の中古車マーケットに行ってみたりネット広告を見てたりして過ごしました。自分でも気付いてなかったのですが、この「なんとなくクルマ」の原因はちょっと前に見たこのトヨタ社長のプレゼンに感動してたからでした。
香港にいると特によく感じます。モノづくりの底力。
トヨタが作るようなクルマ。
ソニーが作るようなオーディオ。
パナソニックが作るような電化製品。
香港では作れません。香港は金融都市ですから、カネにまつわる話は出てきます。しかしモノづくりの話は全然出てこない。香港人の性質も、長い時間をかけて問題を少しずつ解決していき、「Better World」にするために邁進していくというよりは、瞬間的に大きくカネを稼いでやろうという人が多い気がします。
香港のGDPの多くを生み出す金融業界自体、ボーナスのインセンティブがそうなっているので仕方のないことなのでしょうが、「今年は幾ら稼いだか」で評価され、「あのネジ一つの改善にどれだけ心血を注いだか」で評価されない街にいるのは、寂しいですね。
それにしてもこの熱のこもったプレゼン、しびれます!
2011/12/03 23:18

香港の行政長官すなわち日本でいう総理大臣は、香港市民による選挙で選ばれる訳ではありません。1,200名からなる、中国政府が任命したメンバーで構成される選考会により決定します。従って当然、北京の思惑が反映されますので行政長官も北京よりの考え方となります。
しかし、ココがよく誤解されがちなところですが北京は100%香港を意のままに操ろうなんて思っちゃいません。むしろ中国政府は香港人の性質をよく理解しており前行政長官の董建華はあまりに色濃く反映された北京のやり方に市民が猛反発し、事態を重く見た北京サイドは董建華を解任、イギリスの民主的な部分を取り入れた現行政長官のドナルド・ツァンが選ばれています。
北京は人民元のオフショア・マーケットとしての香港の地位を安定させたいので、あまりラディカルな変化は望まないのです。
今回、候補者は二人。財界出身で前政務長官(役職では行政長官につぐナンバー2)唐英年(ヘンリー・タン)と香港行政会議召集人の梁振英(C・Y・リョン)である。どちらも親中派であることには変わりないが、ヘンリー氏は選考会メンバーの支持を多数とりつけているとされ、リョン氏は市民の賛同をより多く得ているという。
選考会メンバーと民意とが異なってきているのだが、民意は反映されない。したがってヘンリー氏優位ということになろう。ちなみに、市民が解決して欲しいと思っている問題の一つに貧富の差の是正があるが、誰が行政長官になったとしてもこの問題は解決されないだろうと市民はあきらめムードである…
2011/12/02 23:34
Market Watchのニュースだが、後ろにほとんど人がいないのが気になる。首切りしまくったのか?
アメリカの失業率が大幅に改善した。120,000の雇用が生まれた結果、失業率は9%から8.6%までに下がった。2年半ぶりのこの低水準にはこの指標に市場は大喜びである。120,000人が新たに職を得たということは、120,000人分の消費が生まれるということだ。この3ヶ月で見れば雇用マイナス失業の数はプラスであり、明るいニュースだ。
ダウもすぐに125ポイント上昇、ホワイトハウスも「経済はポジティブな軌道に乗った」とアナウンスしている。
業種別でみると、120,000人のうち
小売 80,000
観光/レジャー 22,000
プロフェッショナル 33,000
ヘルスケア 17,000
だそうだ。小売が大きく雇用を引っ張っていることとなり、クリスマスセールの好調ぶりとも符号する。
しかし一方で、315,000人が今回新たに仕事を探すのを諦めている。アメリカは香港と違って仕事がなくとも国の福祉でなんとかやっていけるので「次の雇用のチャンスをまとう」とする人たちが案外多い。315,000人ということは、今回生まれた雇用の3倍である。
ちなみに、失業率は株式市場の先行指数だ、と言う人がけっこういる。すなわち失業率が大きく改善すれば、その後大きく株価が上昇するというものだ。直感的にはなんとなく分かるのだが、過去をさかのぼってみても失業率が株式市場の有効な先行指数になった試しはない。
2011/12/01 23:19
カンペキな解決策を求めて。来週、EUサミットとヨーロッパ中央銀行の会合がもたれる。EUサミットのテーマはもちろん、債務危機問題をどうするかだ。もっと端的にいうと、ドイツがユーロ圏の貧乏国の債務の保証人になってくれるかどうかである。
僕が貧乏国の首相なら「ぜひ保証人になってください」とドイツにお願いしにあがるのだが、事情はそんな簡単ではない。というのも、第二次世界大戦の強大なドイツの記憶がまだドイツ以外の国々にあるため、ドイツを保証人とした途端、ドイツに経済的覇権を握られてしまうのではないかという恐れがある。
ドイツはドイツで、貧乏国の保証人になるなんてとんでもない、なんで普段は第二次世界大戦のドイツがどうの、と言われてるのに困ったときに助けなきゃいかんのだ、 しかし自分がやらなきゃマズいことになることくらいは分かっている… という感じである。嫌われていることが分かっているのにカネを出すなんて聖人君子なことをドイツはやらなきゃいけないのだ。
なので今のところ明確に「ドイツ、頼むからユーロ圏を助けてくれ」と言っているのはフランスとポーランドくらいで、他の国はドイツの援助に対して複雑なポジション。ということでカンペキな解決策が来週にどどんと出てくるはずがない。
ヨーロッパ中央銀行の会合では「利下げが行われる」と多くのエコノミストが予想している。CPI速報値は3.0%とおだやかなインフレで利下げを出来ない理由は今ところ、ない。
2011/11/30 23:09

www.alsosprach
中国の70都市の不動産価格中、
前月から上昇(Monthly Increase)
変化なし(No Change)
前月から下落(Monthly Decrease)
このように見てみると、不動産価格の下落度合いがわかりますね。山村部から都市部への人口流入や不動産の頭金規制、意外と素早い中国の金融緩和策なんかもあって、中国の不動産価格は意外と底堅いかもしれません…
2011/11/29 23:14

左が預金準備率、右が消費者物価指数(インフレ率)
予想外に早く、中国が預金準備率を0.5%引き下げた。これにより中国の銀行は新たに3,900億人民元を貸し出すことが可能となる。不動産市場がGDP成長率を押し上げていたが、新たに着工する不動産プロジェクトがほとんどなく中国は現在、成長のドライバを失った形となっている。
そして年末決算を迎える大くの企業にとっては、銀行からの融資が頼みの綱となっている。銀行からつなぎ融資を得られなければ倒産… というのが現実的なシナリオとしてのしかかっている。しかも旧正月中の決済にも備えねばならず、手元資金の不足している企業にとっては頭の痛い問題だ。
中国政府も魔法使いではないので不動産市場を冷やしつつ成長を維持させ、中小企業の資金需要にも同時に答える、というのは出来ない。不動産市場を冷やし続けるというのは既定路線なので、成長の維持の下落を最小限に食い止めることが中国の中央銀行の課題だ。今後は
→ 更なる預金準備率引き下げ
→ 公定歩合引き下げ
→ 景気刺激策
という順番で金融&財政政策が取られていく。預金準備率が今回引き下げられたことで株式市場に対しては大きなクッション役になる。
2011/11/28 23:03
関心はギリシャからイタリアに移ってきた。イタリアの国債のイールドが7%以上で高止まりしている。イタリアは2012年から2013年にかけて、4610億ユーロの国債発行を予定している。IMFがイタリア国債をカバーするのが、最大3330億ユーロだから、発行予定国債の7割をIMFに購入してもらうこととなる。残り3割はEFSF(欧州金融安定化基金)がカバーする。
ところで、いくらエクセルに数字を落とし込んだとしても、この計画がすんなり行くわけがない。4610億ユーロはIMFが融通可能な資金の68%に該当する。すなわち、イタリア一国でIMFの7割弱のリソースを使うことになるのだ。ちなみにイタリアがIMFに支払っているカネはIMF基金全体の3.1%に過ぎない。
ざっくり言うと、3万円支払って68万円戻ってくる計算だ。IMF全体の融通資金の68%をイタリアが拠出していたら誰からも文句はでない。しかし貢献度合いからすると他国は
アメリカ 17%
中国 6%
インド 2.3%
ロシア 2.3%
インドネシア 1%
である。国民一人あたりのGDPはインドはイタリアの20分の1だが、国としての貢献度合いは3分の2である。僕がインド国民だったら、「やってられるか」となってIMFに今後一切資金を入れないよう国会の前でシュプレヒコールをあげるかもしれない。リッチな他国が貧乏国に滑り落ちるのを止めるために貧乏国がリッチ国の手助けをするなんて、国民が許さないのではないか。
従って、これまではユーロ圏の中の問題であった問題がじわじわとグローバルに不公平感を助長していく気がする。日本もEFSFに3億ユーロを投入した。この金額の10倍くらいは投入するのかと思いきや、意外と小ぶりであった。日本も台所事情が厳しく、大きな金額を投入するのはためらわれたのかもしれない。
2011/11/27 23:51
うどんと寿司二貫(サーモン)、カリフォルニアロール二切れがセットで50香港ドル(500円)… 香港生活が長い人なら、どういった種類のものが出てくるのか大方予想できます。すなわち、化学調味料の味しかしない出汁、ぶよぶよに伸びきったうどん、解凍されておらずシャリシャリする寿司ネタ…
そうだ、50香港ドルでまともな日本料理が食べられる訳ないんだ… とモノが出てきてから激しく後悔するのです。しかし一方で
意外とイケる!この味でこの値段ならコストパフォーマンス高い! と快哉を叫びたくなるようなB級案件を拾っていくというのも、香港生活の醍醐味であります。今回は自宅の近くの、「日式料理屋」に行ってきました。
日式料理屋というのは、「香港人やマレーシア人など、日本人以外が作る、日本の食べ物らしきものを食べさせてくれるお店」のこと。日本人が作る日本料理を食べようとするとやはり2,000円、3,000円の出費は覚悟しなければならないのでお手軽に日本料理を食べた気になる日式料理屋がお手軽需要を産める役として存在するのです。
(ちなみに、ほとんどの香港在住日本人は日式料理屋なんて行きません。日本人の肥えた舌からすると、到底マズくて食べられないからです)
で、上記写真がいわゆる「日式料理屋で出されるうどん」。カニカマに巨大なさやえんどう、ワカメに小エビ、ナルトとスイートコーン。うどんは細く、コシは… 予想通りの味と質。今回も撃沈です。
2011/11/26 23:09
慶事には、ブタの丸焼きが
AMGファイナンシャル・グループのトップ、アーノルド・ヤン。今年で42才。31才でAMGウェルス・マネジメントを興してから11年経過する。僕はその11年のうち4年しか一緒に仕事をしていないが、堅実に、しかし猛烈に仕事をするアーノルドには今も大変強い影響を受けている。
2007年11月。AMGを訪れた初日。その日はAMGの他に3社のIFAのトップと面談をし、一番最後にAMGを訪れた。最初にAMGを知ったのは、この業界で働く様々な人からAMGの良い噂を多く聞いたからだ。
そんないい会社なら、さぞかし立派なオフィスを構えているのだろう…とおもいきや、AMGウェルス・マネジメントのオフィスはほとんど雑居ビルのようなところにあった。
他のIFAオフィスはタイムズ・スクエアなどのいわゆるグレードAオフィスに事務所を構え、お客様がここを訪れたら安心するだろうな… という場所だった。しかしAMGが入居するビルはエレベーターホールまで、階段で登らなければならない。オフィスビル自体も古く、おそらく築30年といった風情。エレベーターはガコンガコン音がして「ワイヤーが切れて落ちたらどうしよう」と真剣に悩むほどだった。
エレベーターを降りてすぐにAMGのドア。受付もいない。インターホンを押すとアーノルド本人が出てきた。狭くてホコリの臭いがする会議室に通され、彼が出てきた。当時彼はまだ30代だったのだが、貫禄というか迫力というかオーラというか、そういうもののせいで40代の中頃の仕事に脂が乗っている人が出す独特の空気感だった。
彼は他のIFAのトップと違って、待遇面の話をほとんどしなかった。この業界にどういう問題意識があって、どういう理想があって、そのためには何が必要かを情熱的に話しただけだ。彼のプライオリティははっきりしてる。
顧客利益を第一に考える。アドバイザー利益を第二に考える。IFAファーム本体の利益を第三に考える。
言うは易く行うは難し。ただ、単に言いっ放しであればAMGの名前が出ることはないはず… アーノルドという人は、有言実行の人なのだろう…
僕も感化されやすい人間なので結局、待遇や条件は確認しないまま「この人と一緒に働きたい」という一心でAMGに入社することを決めた。当時、アドバイザーの数は20人ほど。
その後、2009年・2010年とAMGは積極的に他IFAファームを買収した。オフィスも1,000平米の大きなオフィスに移動した。アドバイザーの数は一気に170人程度まで膨れ上がり、とてもじゃないけどアドバイザーの名前が覚えられないほどにまでなった。
後で彼に聞くと
「別にグレードAオフィスに入れない訳じゃなかったけど、そうやってキャッシュをどんどん使ってしまうと『タメ』のない経営になる。4,5年に一度は悪いことが起きるから、その『タメ』がないと商売は長続きしない」
とのこと。アドバイザーの数も増やそうと思えばもっと増やせるが、無秩序な拡大はいずれ大きなほころびを生むとの考えから「自分の目が届く範囲が確立できたら」次のステップに進むという。
僕がAMGにアドバイザーとして入ったときには日本人アドバイザーは私しかいなかったが、現在日本人アドバイザーは5人まで増えた。日本人の顧客の割合はAMGウェルスマネジメント全体では5%に満たないが、AMGは日本人アドバイザーを大変よく遇してくれている。
彼の熱意は出会った時と同じまま… 上司として、大変尊敬している。
2011/11/25 23:28
ブラック・フライデー、滑り出しは上々らしい
アメリカの貯蓄率はまだ高いまま。全収入に対する貯蓄の割合すなわち現預金にまわす割合は、2006年には一時的にゼロ付近になった。それが一昨年に8%程度となり、最新の数字でも7%以上を維持している。
失業率が大幅に改善しそうにないこと、ユーロ圏を発端にした経済危機の深みがまだ見えないことが原因だ。ということで、各メディアには「個人消費、減速」との記事が取り上げられている。
アメリカのように、教育や福祉が充実していれば人々はスポイルされてしまう。香港人妻の弟がアメリカ・カリフォルニアに住んでいるが、子供の出産の際には診察・出産費用はカリフォルニア州が支払ってくれる。その上ミルクや赤ちゃん用タオルまで州持ちであった。弟はアメリカ国籍ではないのだが、享受できる福祉には驚いたという。アメリカ国籍であれば、さらなるメリットがあったに違いない。
「働かない人も豊かな生活を享受できる」
カリフォルニア州はそんな豊かさを誇っているという。そして結果は、というと州財政が破綻して公務員数・警察官数が減らされ行政サービスの廃止、教育費の値上がりと手痛いしっぺ返しを受けている。
今まで何の苦労もなく手に入っていたものだからこそ、それを失うのことは痛い。しかもそれを失うとむき出しの競争社会に否応なく対応させられることとなり、今まで考えずに済んでいた自分の弱さとも向き合う必要がある。
貯蓄率が上昇しているということは、アメリカ人が徐々にオトナになっているということだ。市場は貯蓄率の低下を期待しているが、長期的に見てこの貯蓄率の上昇はポジティブに捉えたい。

