香港金融譚
主に世界の金融や経済情報についてのブログです。
2011/10/15 23:56
ウォール街を占拠せよ
から始まった新自由主義に反対する人たちの一連の運動。この「~を占拠せよ」運動はインターネットを通じて燎原の火のごとくアメリカ全土に拡散、ウォール街のみならずボストン、シアトル、サンフランシスコ、そして東京、香港にまで飛び火している。
東京は派遣労働問題と原発問題が一くくりになっていたが、香港での運動はより先鋭的である。金融の自由化・高所得者への低税制・規制緩和など香港は新自由主義をそのレゾンデートルとする街であるだけに、高所得者層と低所得者層がくっきりと分かれてしまい中流層に漂う人たちの怒りは大きい。
なぜこんなボラティリティの高い世の中になってしまったのだろうか… と思っていたらストンと腑に落ちる本に出会えた。アメリカ合衆国の元労働長官のロバート・B・ライシュが書いた「Aftershock: The Next Economy and America's Future」(邦題は余震(アフターショック)そして中間層がいなくなる)である。
まだ半分くらいしか読んでないのだがこの本の骨子は、
所得上位層への減税が富の集中を産み、ダブついたマネーが投機を促し、その投機のアップダウンの中で中間層は疲弊し、セーフティネットの財源(税収)がないので低所得者層となる
ということだと理解した。香港ほど格差を感じる国はない。セントラルを5分歩くと、ダンボールを大量にリアカーに積み精一杯押している老婦人の前を若者が運転するフェラーリが疾走する… という光景に1つ2つはめぐり合う。
その老婦人は今後いくらダンボールを集めて足を棒にしたとしても、将来的にフェラーリは買えないしその助手席に座ることすらない。逆にその若者が今後ダンボール集めをすることは今後も絶対にない。このように格差がカンペキに固定されてしまっているのが香港で、低所得者層に無力感を植えつけてノンポリにし、結果一部の裕福な有権者たちが政治を動かすという構図である。
かといって、今回の~を占拠せよ運動は低所得者層のガス抜き程度にしか思われてないのも現実である。動画にもあるように、単に「反資本主義!」「反グローバリズム!」とだけ叫んでも通じない。資本主義もグローバリズムも不可逆的に進行しているのが現実だから。
アドバイザーのような、マーケットの風見鶏的仕事をしていると実は高所得者には最高70%くらいの税率でも妥当で、かつ社会がうまくいくのではないかと思う。中間層をいかに太らせるかが最終的に株式市場を実りあるものにし、かつ高所得者も高税率を補ってなお余りある果実を得られることは、1933年以降40年続いたアメリカの繁栄が証明しているからである。
2011/10/14 23:21

債券投資ファンド大手のPIMCO(ピムコ)の運用マネージャのビル・グロス。このブログでも何度も取り上げている債券投資の伝説的マネージャのビル・グロスが、今年は債券ファンド郡の中でも下位10%に入ってしまっていることから投資家に詫び状を書いている。
(野球に例えると)センターがフライをキャッチしなければならないのに、何度もキャッチし損じた。パフォーマンスを向上させるため、今後は毎朝早くグラウンドに通って練習する
ビル・グロスが運用する「トータル・リターン・ファンド」の運用は年初来で1.07%である。債券運用インデックスが6.7%であるのでインデックスを大きく下回ったことになる。ビル・グロスの判断の誤りは、米国のインフレと景気後退が債券価格にどう影響を及ぼすかであった。
結果、米国債券から大きく手を引いてしまった。しかし現実は世界経済の減速を見越して米国債が買われる結果となった。ビル・グロスは20兆円弱の資産を運用しているが、その判断はいつも大胆である。これまではその大胆な判断がポジティブに影響したが、今回はそうではなかった。
現在、ビル・グロスは他の債券ファンドマネージャよりも米国長期債券をより多く保有している。ビル・グロスの今後の景気判断の読みには変更がないようだが、それでもなお米国債は買われると見ていることとなる。安全資産として、投資家は米国債以外には選択肢がないという判断だ。
2011/10/13 23:23
アメリカの銀行が家を担保に融資をする際、借金する人の条件だけ入力していけば自動的に融資が決定されていた。全自動で融資が決定され、銀行責任者のサイン付き書類が吐き出されるので「ロボット・サイン」と言われており、アメリカの住宅バブルを演出した小道具の一つでもある。
アメリカの銀行はロボット・サインが始まった当初はまだまだ住宅バブルが続くと考えていたし、実際にその通りになったのでロボット・サインは全く問題にならなかったのだが。
住宅バブルがはじけてしばらくは銀行は住宅価格がこれ以上下がることを恐れて抵当流れ物件を市場に放出しないようにしていた。しかし銀行もいつまでも我慢できるものではないから、いよいよ抵当流れが出まわり始めている。
特に2005年には2億円以上の物件がバンバン売れていたハワイはそのショックを大きく受けているようで大手デベロッパーが開発したリゾート地がことごとく売れず、ゴーストタウン化しているらしい。このビデオ中にもあるが、「富裕なハワイ好き日本人の購買意欲も完全に失せてしまっているのか」という質問には「完全に失せているわけではないが、問題の解決に至るほどの力には全然なっていない」ということらしい。
これはこれで、円を持っている人にとってはチャンスである。
2011/10/12 23:56
ジョージ・ソロスがファイナンシャル・タイムズに寄せているコラム「ユーロの地雷原を通過するためのルートマップ」の中で、
各国の金融支援だけではユーロ危機は収まらないことは理解しなければならない。金融支援の他にも、銀行に斬り込んでいかねばならない
また特に銀行再建その順序も大切だ。銀行の資本構成を変えていくことの他に"銀行保証"すなわち銀行の債務について政府が保証することを盛りこむ必要があるが、この銀行保証が先に来なければいけない
としている。現在、欧州金融安定化基金(EFSF)が4400億ユーロの融資能力を有するに至った。これはギリシャの破たんを防ぐに必要だと言われている2000億ユーロを大幅に超える数字でもある。ジョージ・ソロスは、額ももちろん大切ではあるが、その順序を間違えると結局不安は解消されずにEFSFの無駄遣いになるだろうと指摘している。
結局、ギリシャ破たん危機はしばらく先延ばしにされそうである。経済が成長している時にはこういった問題というのは覆い隠されるものなので、EFSEや他の小手先の延命策より今後経済がどれくらい悪くなるのか(あるいはならないのか)が分かれ道になりそうだ。
各国の金融支援だけではユーロ危機は収まらないことは理解しなければならない。金融支援の他にも、銀行に斬り込んでいかねばならない
また特に銀行再建その順序も大切だ。銀行の資本構成を変えていくことの他に"銀行保証"すなわち銀行の債務について政府が保証することを盛りこむ必要があるが、この銀行保証が先に来なければいけない
としている。現在、欧州金融安定化基金(EFSF)が4400億ユーロの融資能力を有するに至った。これはギリシャの破たんを防ぐに必要だと言われている2000億ユーロを大幅に超える数字でもある。ジョージ・ソロスは、額ももちろん大切ではあるが、その順序を間違えると結局不安は解消されずにEFSFの無駄遣いになるだろうと指摘している。
結局、ギリシャ破たん危機はしばらく先延ばしにされそうである。経済が成長している時にはこういった問題というのは覆い隠されるものなので、EFSEや他の小手先の延命策より今後経済がどれくらい悪くなるのか(あるいはならないのか)が分かれ道になりそうだ。
2011/10/11 23:16
モルガン・スタンレーの過去1年間の株価
当時の日本の新聞は、三菱東京UFJ銀行が外銀であるモルガン・スタンレーを買収したことに対してさも「リーマン・ショックで傷つかなかった日本の力を世界に見せつけた」的な書き方をしていたが、当の三菱東京UFJ銀行はこんなワリのあわないディールはそもそもやりたくなかったのではないか…
香港人のアドバイザーも「なぜあんなお荷物(当時はバンカメに続いて破綻の危機にさらされていた)を買ったのか。しかも超高値で」と言われて答えに詰まったものである。
後から前財務長官ポールソンの回顧録を読んで、政治的に日本に打診した結果出資を引き出したことが分かったが、それにしても「危ない・高い・保有ポジション分からない」のモルガン・スタンレーを大急ぎで、しかも高く買収した日本側の金融オンチぶりは世界の笑いものになっていた。
三菱東京UFJ銀行がオンチだったわけではない。麻生内閣が、である。
そしてもし、モルガン・スタンレーに公的資金を注入しなければならないことになったら、三菱東京UFJ銀行経由なので当然日本にその請求書は回ってくるのである。
2011/10/10 21:51
10月6日のニュースになるが、イギリス中央銀行(BoE)総裁がユーロ危機に備えて2750億ポンドの量的緩和(2008年のQE1から数えて2回目)を発表した。キング総裁はここのところのユーロ首脳らの無為無策に強い危機感を抱いており、テレグラフ紙によるとキング総裁が「世界はかつてない金融危機に突入しつつある」と述べたらしい。
ギリシャのデフォルトが、仮に秩序あるものだったとしても欧州の巨大銀行のバランスシートを大きく毀損し蜘蛛の巣のようにつながった金融システムを破壊するだろうという目算である。
たとえば売れっ子作家が思いつきでこういった扇情的な発言をするならまだしも、イギリス中央銀行総裁の発言である。しかもユーロ危機からイギリスの経済と金融システムを保護するために大量のカネをばらまくのであるから、「相当鋭い見立てがあるのだろう」と思うより他にない。
市場はCDSにてギリシャに対してデフォルトの烙印をすでに押しているのにかかわらず、EUはギリシャ破綻に対してどのような対策を取るのかがはっきりしない。具体策のない前向きな発言だけでは危機はストップしないのに。
ところでデクシア銀行からユーロ金融危機を発生させまいと、ベルギー、フランスそしてルクセンブルクもデクシア銀行の債務保証と預金保証にかなりの金額(1220億ドル)を突っ込んだ。
デクシア銀行が口火を切って、ユーロ圏では次々とモグラたたきのように対策が必要となるだろう。金融機関への対策、対策となっている間にギリシャが国債の利払いが出来ずに飛ぶのが、最悪のシナリオである。
2011/10/09 23:30
九龍のICCビルにて、エルメスのワークショップが開かれているのに気付いた。エルメスで働く実際の職人が「こうやって布を染めるんですよー」「こうやってバーキンは縫製されるんですよー」と客に向かって話している。職人さんはどこか、照れくさそうだった。職人気質とは、どの国も同じのようだ。


2011/10/08 23:02

先日も時計のオークションに行ってきました。「スイス・オークションズ」という聞いたこともない名のオークションハウス。オークションハウスは信用がつきもの。誰がサクラとして値を吊り上げるかわかりませんから、オークションに参加するバイヤー&セラーはサザビーズやクリスティーズなどの老舗オークションハウスを利用するのです。
しかしオークションで出品するのも落札するのも手数料がかかります。サザビーズやクリスティーズだと、値段にもよりますがハンマープライスの15%-25%をバイヤーが払います。セラーも同じくらい払うので、老舗のオークションハウスがどれだけ儲かるかが分かります。
時計のオークションがワインオークションに次いでハンマープライスが低く(すなわち出品されているモノが安く)、時計ですと1本30万円くらいから7000万円くらいです。ちなみに、誰でも参加可能です。インビテーションをもらってなくとも、客の入り具合いで飛び入り参加も可能なので、気後れせず行ってみることをオススメします。
今回のスイス・オークションズで100ロットくらいが出品されておりました。どうみても数合わせであろうと思われるロレックスやブレゲ、ブルガリの時計が並びます。目玉は最後のほうに登場し、今回はパテック・フィリップ2本、ハリー・ウィンストン1本が目玉のようです。
オークションはリッツカールトン香港のボールルームで行われました。オークショニアが早口で商品の特徴を述べます。時計だとトゥールビヨン、パーペチュアルみたいな基本的な単語を知っていると「なぜこの時計が1000万円もするのか」が分かってなかなか楽しい。
ところが今回のオークション、人の入りが芳しくありません。40分も遅れて始まったオークションでしたが、オークショニアの元気のいい掛け声とは裏腹に入札の勢いがなく、最低落札額に届かずに流れてしまう… というのが2,3ロット続いてようやく1つ売れるみたいな展開。
100ロットがオークションにかけられて落札されたのは30-40ロットくらいでしょうか。いやはや低調なオークションで壇上のオークショニアが可哀想でなりませんでした。
オークションが低調であれば、オークションハウスはオークションを行いません。手数料を稼げず赤字になるなら、マーケティングにもっともっと力を入れてから出直すか、あるいは目玉商品をもっともっと集めねばなりません。
同じことが香港政府の土地オークションにも言えます。香港政府はデベロッパーからの需要が薄すぎて11月12月と土地オークションを実施しないこととしました。
しかし香港政府は年間20,000戸を新規に市場に投入することをコミットしています。かつ住宅を安くで手に入れられる「ホーム・オーナー・プログラム」の実施も数年後に控えております。
もともと香港の住宅バブルは受給の逼迫ではなく投機です。ピーク時と比較して2011年中頃まで10%、2013年までに25-30%の下落というのが市場のコンセンサスのようです。
2011/10/07 23:45

茶色のポッチが2008年2009年通じての最低の株価。青いポッチが現在の株価。
モルガン・スタンレー、ソシエテ・ジェネラルなお巨大銀行がここ最近で激しく売られた。下の方のインデックスは回復しているが、金融機関株価の低いパフォーマンスが続けば、インデックスもいずれこの状態えはいられないことは確か。
2011/10/06 23:36
「ユーロが崩壊した場合、ポートフォリオはどのようなダメージを受けるのでしょうか」
この3ヶ月間くらい繰り返し聞いてきた質問です。これに対しては、「ドイツの内政などを見ていても、各国が内向きになっていることは確かです。拡大の恩恵を受けてきたユーロ圏の10年間の栄光が、今は足かせに見えなくもありません。それでもユーロが崩壊することは考えられません。ギリシャ一国が脱退することはあっても」
この心配は非常によく理解できる。ユーロが誕生してからまだ日が浅く、しかも市場統合を今更否定するような動きが草の根で起こりつつあるので「突如としてユーロ圏って考え方や~めた」とならないかというのはよく分かる。
しかし日本の政治と違ってヨーロッパの政治は二千年続いてきたヨーロッパ大陸の内戦にピリオドを打とうとする、地に足の着いた壮大かつ勇気のある計画である。マーストリヒト条約のスピリットは、有史以来日和見で生きてきた我々日本人には到底理解できない。
そのスピリットを覆すためには、もう一度ユーロ圏内での戦争が必要だ。それくらい相互に不信が高まって始めてユーロ圏の崩壊は俎上にのる。そして今は、ギリシャ一国のデフォルトをどう処理するかという程度である。
すなわちユーロ圏の崩壊なんて考えられない。
ただ投資家心理が冷え込んでいるのは事実だ。問題の大きいところに投資家の情熱は向かわない。ドルと円を買っておくという選択肢はしばらくは有効であろう。しかし来年はユーロはもっとも大きな果実を産む通貨となるかもしれない…ということは頭に入れておいたほうがいい。ギリシャの秩序あるデフォルトは、厄災でなく福音である。
__________________________________
たぶん、日本のメディアがこの議論を必要以上に煽っているのだろう。日本のメディアはどちらかというとゴシップ好きで極論好きである。しかし物事は、特に金融は中庸な事象しか起こりえない。資本主義が崩壊することもないし、日本が突如ハイパーインフレになることもない(残念ながら)。
それらを期待して香港に、あるいは海外に資産を逃がすというのは、核戦争が起こることを想定して地下シェルターを作ることくらいおかしなことでもある。
この3ヶ月間くらい繰り返し聞いてきた質問です。これに対しては、「ドイツの内政などを見ていても、各国が内向きになっていることは確かです。拡大の恩恵を受けてきたユーロ圏の10年間の栄光が、今は足かせに見えなくもありません。それでもユーロが崩壊することは考えられません。ギリシャ一国が脱退することはあっても」
この心配は非常によく理解できる。ユーロが誕生してからまだ日が浅く、しかも市場統合を今更否定するような動きが草の根で起こりつつあるので「突如としてユーロ圏って考え方や~めた」とならないかというのはよく分かる。
しかし日本の政治と違ってヨーロッパの政治は二千年続いてきたヨーロッパ大陸の内戦にピリオドを打とうとする、地に足の着いた壮大かつ勇気のある計画である。マーストリヒト条約のスピリットは、有史以来日和見で生きてきた我々日本人には到底理解できない。
そのスピリットを覆すためには、もう一度ユーロ圏内での戦争が必要だ。それくらい相互に不信が高まって始めてユーロ圏の崩壊は俎上にのる。そして今は、ギリシャ一国のデフォルトをどう処理するかという程度である。
すなわちユーロ圏の崩壊なんて考えられない。
ただ投資家心理が冷え込んでいるのは事実だ。問題の大きいところに投資家の情熱は向かわない。ドルと円を買っておくという選択肢はしばらくは有効であろう。しかし来年はユーロはもっとも大きな果実を産む通貨となるかもしれない…ということは頭に入れておいたほうがいい。ギリシャの秩序あるデフォルトは、厄災でなく福音である。
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たぶん、日本のメディアがこの議論を必要以上に煽っているのだろう。日本のメディアはどちらかというとゴシップ好きで極論好きである。しかし物事は、特に金融は中庸な事象しか起こりえない。資本主義が崩壊することもないし、日本が突如ハイパーインフレになることもない(残念ながら)。
それらを期待して香港に、あるいは海外に資産を逃がすというのは、核戦争が起こることを想定して地下シェルターを作ることくらいおかしなことでもある。


