香港金融譚
主に世界の金融や経済情報についてのブログです。
2011/11/04 23:56
アメリカの不動産は投資としてどうなんだろう?
2000年まで、アメリカの住宅価格は極めて安定していた。しかし2000年から2007年まで米国住宅市場は右肩上がりであった。インフレ調整後でも価格は年平均6%程度で、人々はローンの借換えによって住宅をATMマシンとして利用してきた。そして痛い目にあっているこの3年間。
安定している時期と良い想いをしている時期を足せば、痛い想いをしている期間よりも圧倒的に長い。ということは、人々の記憶の中には不動産マーケットに対してはぼんやりと(無茶をしなければ、悪くない)くらいには思っているのではないか。
というのも、連銀の努力の甲斐あって住宅ローン金利は下がる一方、価格も下方安定し今年新築された住宅価格の中央値はUSD160,000程度である。アメリカ人の平均年収の4年分未満であり、住宅費負担限度率指標、いわゆるアフォーダビリティも十分低くなってきた。(ちなみに香港のソレは平均年収の27年分)
このサブプライム・ショックの余韻がいまだ残っているとしても、頭金を2割か3割くらいまでに高めれば、住宅を購入しても良いかな…という層が増えてもおかしくないと思うのである。ダウンペイメントなしのオーバーローン…などという狂ったハイレバレッジはそもそも銀行がもう許さない(と思う)ので、アメリカの住宅は値ごろ感が出てきているように感じる。
とはいっても、日本人にとってバブル崩壊後の20年間の住宅市場がどのような動きをしたかを知っているだけにアメリカの不動産も同じ轍を踏むのではないかとつい思ってしまう。日本人のお客様と話していても「ホレみたことか。アメリカはあんなエラそうに言ってたのに、結局日本と同じではないか」という意見をよく耳にする。
しかしアメリカは日本のバブル崩壊後の日本政府の対応と異なり、積極果敢に利下げを行い金融緩和策を採用してきた。またいわゆるゼロ金利政策を解除する予定も(2013年までは)なく、外科手術を終えたアメリカ経済に新しいショックをもたらすような愚は採らない。そして仮にリーマン級のショックが来たとしても住宅という実物は株や債券などのペーパー資産と違って下落する幅はしてれている。
世界経済の回復の遅さを勘案すると、すぐに上昇するような資産クラスではないけれど…
2011/11/03 23:08

結局、あの「ギリシャ財政再建プランを国民投票に付す」というのは何だったのか…ということにはなるのだろうが、短期的には破たんを免れた。次に投資家が狙うのは、安くなったギリシャ株を買うべきかどうか、についてである。暴落しそうな国債については、当然買わない。
PERが6倍という水準にまで落ちてしまったギリシャ株式市場は魅力的には映る。ギリシャが破たんしたところでギリシャの企業は元気にやりぬく可能性もある。現在は雲行きのアヤシさに影響を受けて得られているが、ひと度いいニュースが出てくると良い方向に回りそうだ。
またドラクマの下落により利益を享受する企業もあるのだから、国がヤバいというだけで十把一からげで売られてしまうのも違う気がする。しかも投資格言で「人の行く裏道に道あり花の山」ともいうし、かのバロン・ロスチャイルドも「街に血の臭いがする時こそが、もっとも良い投資時期である」と言っている。暴動が頻発しているアテナは、血の臭いがする。
そしてギリシャ株式市場はピーク時から87%下落した。これが87%でなく90%でも95%でも、ピーク時の80%減まで戻れば万々歳だ。
ただ、ギリシャ株式市場に投資できるファンドがほとんどない。Lyxorのギリシャ株式ファンドくらいか。あるいはプライベートバンクなどを通じて株式を買うか。どちらにしても、ギリシャを応援するtもりで少しだけ冒険してみるのも悪くないと思う。
2011/11/02 23:41
ドイツ・フランスの説得にもかかわらず、パパンドレウ首相は国民投票をやるらしい。報道によると、「ユーロがギリシャの財政に口を突っ込んでくること」に賛成しているのは4割、反対6割。すなわち、仮に借金が半額になるとしても、警察官の数が減ったり、先生の数が減ったり、ゴミ清掃車が減ったり、ただでさえ劣悪な公共サービスがこれ以上悪化することに耐えられないのである。
(どこの国でも公務員は批判の的になるが、生涯その地位を保障され健康保険や年金もついてくるギリシャの公務員のサービス・スタンダードは劣悪である。僕の友達は労働ビザの申請だけに、1年もかかった)
ただでさえ失業者の多い国。17%近くの国民が失業し、16-25才からの失業率は25%にもなる。国家の支出をドイツ&フランスの指導によって減少させられ、ユーロ圏自体の消費の落ち込みをくらえば失業率は更に悪化する。
しかし… 控えめに見てもギリシャ人はリラックスし過ぎだ。失業率が高いのも、単に仕事がないからというよりは、単に仕事をしたがらない人が多いのではないか。仕事をしないのは構わないが、そのツケをギリシャや、ひいては世界に払わせるのはどうかとは思う。
パパンドレウ首相はもともとアメリカ生まれである。緊縮財政をしいて、怠け者のギリシャ人を破綻から救おうとしている彼の努力は賞賛されてよい。しかしギリシャ人は怠け者だがプライドだけは高い。お国柄議論が好き。他の国がギリシャに対して鼻持ちならない態度を示せば、すぐデモなどの示威行動にでる。
パパンドレウ首相はそんなギリシャ人に愛想を尽かし、今回の国民投票で最後通牒を突きつけたのではないか。デフォルト後の塗炭の苦しみを経て、ギリシャ人が更生することを願って…
2011/11/01 23:56

道程はそんな簡単ではないとは思っていたが、この可能性があるとは想像していなかった。ギリシャ首相のパパンドレウはギリシャに対する救済策を国民投票にかける、と言い出した。もともと支持基盤が強くないパパンドレウの人気取りのためなのか、「箸の上げ下ろしまでドイツとフランスに口出しされるのはイヤ」ということでギリシャ救済策に対しては国民の60%が反対しているという。
このまま国民投票されてしまえば、ブリュッセルで開催されたユーロ17カ国での成果は水泡に帰す。しかも失うものは時間と労力だけではない。何の根回しもせずにいきなり国民投票だと言い出したパパンドレウ首相はEU圏のみならず、国際社会からも見放され、今後10年は「ユーロ金融危機を加速させた張本人」として記憶されることとなる。
フランスのサルコジ大統領とドイツのメルケル首相は(おそらくこの決定に激怒して)早速フランスのカンヌでギリシャ高官と会う予定で、「10月27日にブリュッセルで決定したことを迅速に進めるために最大限の努力をする」と電話コメントしている。
国民投票を実施しないとすると一段落だが、国民投票を実行するとすると国民投票まで2,3ヶ月かかる見込み。それまでユーロ圏のソブリン危機は悪化の一途をたどることとなる。ギリシャはEUから離脱するつもりで、このような暴挙に出たのか。ちょっと検討はつかないが、金融市場にまた9月と同じタイプの動揺が広がりそうだ。
2011/10/31 23:35
負債総額64兆円だった投資銀行大手のリーマン・ブラザーズと負債総額5000億円の先物・オプションブローカーのMFグローバルとではショックが100倍以上違う。しかしMFグローバルが破たんしたインパクトはリーマンの100分の1以上はあった。というのも欧州の債券を買っていたことが直接の破たん理由なのだが、破たんを申請してから顧客の資産の分別管理に問題があったことがバレたからである。
これにより数百億円規模で顧客資産に影響を及ぼす。要するに、取引口座にいれたカネが戻ってこないかもしれない、ということ。幸か不幸かMFグローバルはモルガン・スタンレーやAIGのように「大きすぎて潰せない」規模ではなく、小さいので潰していい規模であった。なので救済に血税が投入されることはない。
分別管理がきちんとなされていなかったことも問題だが、このMFグローバルは自己勘定取引を行ない、ギリシャ国債に突っ込んだ結果破滅してしまった。今後再び、自己勘定取引の制限に傾くこととなる。もともとゴールドマン・サックスのCEOであったジョン・コーザイン氏が急激に大きくなろうとリスクテイクに動いた結果である。
しかし、コーザイン氏一人を責めたところで仕方がない。会社を大きくしようという彼の欲と、世界の金融市場の不安定がつながっているというリアルを反映した制度設計をしなければいけないのだが、今後この事件を契機に再び銀行や証券会社は儲かりにくい職種となりそうである。
金融機関の投機的動きを規制するボルカールールは、2012年1月まで規制内容について、公募でも意見を募るらしい。MFグローバルの一件で、ますます厳しい内容になるのは間違いない。
2011/10/30 23:33

香港の不動産取引量が激減し、2003年のサーズ時の水準まで近づきつつある。日本のバブル崩壊時もそうだったが、価格が下落するトレンドに入る直前は取引量が極端に少なくなる。夕方、オフィス街を歩くと不動産ブローカーだらけ。2年前は不動産ブローカーも物件案内に忙しくて街をウロウロしたりしてなかったのに。
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次、不動産市場が沈んだら… と日々妄想している私にとって、香港不動産市場は是非トライしてみたい市場である。これほどプレイヤーが限られていて、かつその騰落が予測しやすい市場は近くにない。香港不動産市場が仮に沈んだとしても、世界の中央銀行も政治家もそんなこと気にしない。それに香港人の熱しやすく冷めやすい性質は市場の振幅を更に大きくする。だから次、沈んだら投資用で一軒くらい試しに購入しようと思っている。
これからどれだけ香港不動産市場が沈んでくれるか、である。買い手としては大きく沈むのを期待するが、どうも事実としては「沈むが、時間がかかる」というのが正解のようだ。不動産は中古物件市場ではプライムエリアを除いてピークから10%の下落を記録しているところもある。西九龍など中国との行き来のしやすさをメインに大規模な再開発を手がけたところは、軒並み二桁の下落幅である。
これは中国の温州商人が投資用に購入していったものがキャッシュ化されているようだ(温州商人は中国一商売が上手だが、銀行の貸し渋り・貸し剥がしで苦労している。苦労しているのは中国人一般に言えることだが、温州商人は世界中に不動産投資しているから目立つのだ)。
しかし香港島の一部は下落どころか微増しているところすらある状況なので、全体としては下落傾向にあるとしても下落の幅は場所による。この香港の不動産市場は日本のバブル崩壊を知る人の目にはどう映るのだろうか。日本の不動産バブルの崩壊を知る人と食事をしたが、日本の不動産バブルを知る方にとっては、香港の不動産バブルとかつての日本の不動産バブルとは大きく異なるらしい。
・浮かれモードではない。
バブル世代以降の僕達が「浮かれモード」オンであったことは人生で一度もない。従って浮かれモードが一体どういうものなのか分からないが、とにかく羽振りの良い人達が回りに多く、不動産屋・証券会社に勤めている人たちの年収は平均して今の倍以上はあったという。カネの使い方も派手であったらしい。
しかし2006年・2007年のような、「社員旅行は世界一周」「お年玉にベンツ一台」「部署全体で、木曜夕方から馬刺しを食べに熊本へ」みたいな話はめっきり聞かなくなった。企業も個人も、すっかり守りに入っているから逃げ足も速い。
日本のバブル時はもっともっと派手だったようだが、それは浮かれモードではなくイカレモードだと、バブル後世代の私は思う。
・バブル対策がなされている
香港でフルローンなんてあり得ない。最低でも頭金3割。住宅価格によっては価格の5割。従って、住宅価格が3分の2~半分にならないと追加担保が発生しない。住宅ローンを支払い続けられる以上、売却するインセンティブには欠けるため劇的に不動産市場が悪化することはない。
・低金利政策が継続される
日本の場合、バブル崩壊中になぜか金利引き上げが行われ崩壊のスピードを加速させた。香港はドルペッグのせいで、アメリカの公定歩合と連動しなければならない。アメリカが低金利である以上、香港もイヤでもマネージャブジャブ作戦を追随しなければならない。
香港の銀行は不動産に対しては異なる金利政策を採用することができるが、インフレ懸念がある以上、不動産を買うインセンティブになる。
次のバイヤーとしては大変残念だが、思いっきり安値を狙うというのは難しそうだ。
2011/10/29 23:33

英首相、デイヴィッド・キャメロン
イギリスとフランスは昔から犬猿の仲。今回も外交問題に発展しかねない発言が、サルコジから英キャメロン首相に飛び出した。
”We’re sick of you criticising us and telling us what to do. You say you hate the euro, you didn’t want to join and now you want to interfere in our meetings,”
「我々(ユーロ)はイギリスがあーだこーだ言うのに本当にうんざりしている。ユーロが嫌いでユーロに参加せず、一方でユーロが主催する会議に口出しをしてくる」とサルコジはイギリスの外交筋を通じて「独仏がユーロを乗っ取ろうとしている」と今回のユーロ救済策にイチャモンをつけているキャメロン首相を一喝したという。
ユーロの命運を占う今回の救済策に茶々を入れられれば、そりゃ腹が立つであろう。しかもサルコジもメルケルと同じく国内世論を抑えてユーロ全体のことを考えた末に出したオトナの結論である。それを蒸し返されたのであればたまったものではない。
イギリスはサッチャー首相の時からの金融開放政策が一時代を終えて、「次、何で食べていくか」を考える瀬戸際のところでもある。かたやユーロが安定に向かい、ますます結束を固めてしまうと英米の影響力がますます落ちる。
ではイギリスがユーロ入りすることは?絶対ない。腐っても大英帝国。田舎者のサークルに王様が入る訳ない。しかし王様は裸。今回のユーロ救済策でイギリスのプレゼンスは何もなかったどころかこんなイチャモンでますます評判を落とした。
2011/10/28 23:07
WSJのこのビデオによると11月第一週の投資テーマになりそうなのが、ヨーロッパの動静、連銀のQE3的なもの、そして失業率が9.0%を切るか、の3点だそうだ。
ヨーロッパはブリュッセルのミーティングを終えてほっとしている。1000億ユーロを銀行に資本注入することでギリシャ国債の半分棒引きで苦しむこととなる銀行の危機は防げそうだし、銀行に自主的徳政令を促すことでギリシャ国債がジャンク債になることも避けられた。
50%を棒引きした時点で「借金の半分は返せない」と宣言したも同然であるから、事実としてはデフォルトそのものである。しかし国内世論を抑えてメルケルとサルコジが政治的手腕を発揮し合意に至らせたのは歴史の教科書に残してもいいくらいである。
ユーロのソブリン危機は、景気と隣りあわせ。危機が去ったと思っても市場は生き物だから、いつ機嫌が悪くなるか分からない。
そして11月4日のFOMC、連邦公開市場委員会である。QE3的なもの、すなわち国債を買いまくって再びマネージャブジャブにするという作戦はやはり見送られそうだ。というのも、もうすでにその状態であるからだ。なので問題はリスクマネーが足りないことではなく、リスクマネーが国内の事業振興に利用されないことである。
また10月は株式市場が好調であった。FOMCが追加の金融緩和策を採用するとはなかなか思えない。
そして失業率。9%台のまま次の不景気を迎えるかというところだ。連銀の存在目的は失業率抑制と物価抑制である。失業率抑制を考えるなら、連銀の仕事はまだまだ足りないということになる。市場コンセンサスでは失業率が9.0%を下回って改善することはない、とされている。もし9.0%を下回っていれば、連銀にQE3を実行する理由はない。
2011/10/27 23:31

苦悩するヨーロッパ救済基金総裁のクラウス・レグリング
中国がまだユーロ救済にカネを出すと決まったわけではない。それどころか、財務局副長官は
スキームが完全にクリアに見えるまで、カネは出さない。それに決定まで慎重に技術的議論を重ねる必要がある
とコメントしている。基金のトップのクラウス氏は北京に飛び、当局に助けを求めたようだ。中国は候補としてあがっていたようだが、「出す」とコミットした訳ではない。中国は駆け引きの能力に関しては歴史が育て、他国と比較して抜きん出ている。
その中国からカネを引っ張ろうとするのであれば、相当な覚悟が必要である。しかも救済基金側は満身創痍。中国が簡単に手を差し伸べるとは到底思われない。僕が中国の当局であれば…
・今後ヨーロッパ内で建設される湾岸や空港プロジェクトに中国の資本参加を認めさせる
・中国の輸出競争力に歯止めをかけないよう、関税を緩和・撤廃させる
・ユーロ内で中国人に対して就労ビザの発給を緩和する
・人民元建で取引される商品市場をつくる
・中国資本に対する法人税の引き下げと、監査要件の緩和
ユーロ救済基金100兆円のうち、もし20兆円程度を拠出するのであればまずはこれくらいのことは要請するだろう。ところで今回のユーロ危機のさなか、中東のコミットメントが全然聞かれない。もともと中東とヨーロッパは深く親しい関係にあるのに。なぜだろう。
サッサとどこかの国が手を挙げないと、また風邪がぶりかえす。この兆候はイタリアの長期国債の金利にも現れていて、ブリュッセルでの大枠が決まってからも、金利は落ちていない。
2011/10/26 23:45
見方を変えなければいけない時というのは、こういうニュースに触れたときである。私たちは中国の銀行についての利益については過少に見積もっていた。地方政府の借金増大や中小企業の倒産、個人の破産など中国の銀行のクレジットリスクの管理については情実で支配される世界なので景気後退局面においては苦しくなるだろうと踏んでいた。
貸し渋りの増加やローンの焦げ付きの増加については、これは事実である。しかし中国の銀行は国営である。いざとなれば政府から資金援助を得られる。銀行のカネが尽きれば、政府からカネを引っ張ってきて貸出を増やせばよい。
なので中国の金融システムが日米欧のようなシステミックリスクにさらされるということは考えにくい。中国は成長が鈍化しているが、それでも9%前後を今後数年は保ちつづけられる国であるので、中国の中小企業の倒産レートや地方政府の借金はニュースでは取り上げられるものの、投資判断としては「判断する必要がないもの」として良いのではないかと思った。

