Ogura Manabu
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香港不動産価格指数。現在、底値(2003年)の3倍以上。

1. 高かった

有り体にいうと「オカネがなかった」ということになりますが、単にオカネがなかったというのも芸がないので金融芸人たるファイナンシャル・アドバイザーらしくクドクドと説明(言い訳)していきます。

またなにぶんおカネに関わることなので私自身の考えが色濃く反映されており、それを不快に思われる方もおられるかもしれないことを最初にお断りしておきます…



当時、ちょうどリーマン・ショックがあって2007年までは順調に上昇を続けていた香港不動産も一気に取引高が減少しちょっとした投げ売り状態となっていました。とはいえ株式市場のようにパニックとまではなっておらず、「下がってもすぐ上がるだろう」と考えていた人がまだ多かったことを記憶しています。

株式でも何でも、値動きのある資産を購入するには逆バリが基本です。要するに誰かの熱狂に追随することはかなりの確率で敗者のゲームに参加していることになり、逆に売り手の失望や動揺は買い手にとってプレミアムをもたらしていることが多いのです。

2008年に正式にAMGウェルス・マネジメントの一員となってから、忙しい日々を過ごしておりましたがそれこそリーマン・ショックがあって投資家のマインドも一気に冷えてしまい新規の投資口座の開設もピタリと止まり、いわば「商売あがったり」の状態が続きました。

根が呑気に出来ているのと、AMGの上層部からのノルマやプレッシャーも特にないので、「まぁ、雨の日もあるよね」くらいの気持ちでおりましたがどうせヒマなんだしマーケットの勉強がてらにと割安感が漂っていた香港不動産市場を自己資金でなんとか屈服してやろうと思いました。

香港不動産市場は自分にとっては非常に分かりやすい市場です。「金利動向」「チャイナ・マネー」「住宅価格/賃貸料に対するアフォーダビリティ」「需要と供給のバランス」「頭金の割合」、この5つくらいで香港不動産市場を動かすほぼすべての要因をカバーしているのではないでしょうか。

とはいえ、ここにあげた複数の要因を読み誤ったせいで住宅を買いそびれてしまいました。

金利動向について、確かにアメリカはFFレートを下げていましたから香港ドルと米ドルとがペッグされている以上は住宅ローン金利も下がります。これは住宅価格を押し上げる要因となります。

しかしQE的なものについて、自分が書いた当時のブログを読みなおしてみると、その効果については相当懐疑的で「ドルの信用がなくなる」とまで書いてありましたがあれが読み誤りでした。貯蓄率も低く、対外貿易収支も大赤字。そんな国にいったい誰がファイナンスするんだ、要するにカネがないヤツにカネを貸すのと一緒じゃないかという素朴なギモンがあったからです。

実際にはアメリカよりもさらに悪い国が多くあったせいで米ドルが買われ、アメリカ国債が買われて金利はどんどん低くなっていきました。また基軸通貨は性質上、多極を嫌い一極集中する性質があります。

住宅ローンはいったん下がってまたドルの信任が問われる場面で上昇する。そこで住宅価格に対してもストレスがかかるというのが僕の読みでしたが住宅ローンは上がることなくスルスルと下がっていきました。

チャイナ・マネーについても2008年の11月に中国があれほど巨額の景気刺激策が発表されたにもかかわらずそのマネーの一部が香港の不動産に向かったらどうなるかを予想し得ませんでした。

景気刺激策に用いられる予算の一部は、不正蓄財となります。良い悪いの議論ではなく、事実としてそうなのです。その不正蓄財の資金の置き場として銀行口座ではなく不動産が好まれるのです。中国人が大挙して香港の不動産を買いに来て、あれよあれよという間に不動産価格が上昇していきました。

当時、1500万香港ドル前後の物件を物色していましたが少し悩んでいると「売れちゃいましたよ」みたいなメールがよく届きました。頭金は7割くらいを考えていたので、価格が上昇して結局オカネが追いつかずに買えない状態となったのです。

また、香港不動産のような騰落の激しいものを家計のバランス・シートの最大のものにするのに非常に大きな不安を覚えたのも同時期です。7割頭金で3割借り入れというのが理想かなと考えてましたがこんな騰落の高い資産を借金してまで買うなんて頭おかしいんじゃないの、と思い始めました。

それに僕には「一国一城の主」になりたいという動機が全くありません。死ぬまで賃貸でも良い派です。家を買うとローンのことや修繕費、固定資産税のことなどいろいろと面倒がくっついてきますが賃貸は気楽です。

すなわち香港不動産を購入することで負うファイナンシャル・リスクをカバーするメンタル・プレミアムがなかったのです。なので不動産マーケットに入る前に不動産市場が大きく上昇したため2011年の夏ころには不動産購入は完全に諦めました。

2. 異常な投機熱、意味が分からない話が増えた

不動産購入をキッパリ諦められたかというとそんなことはなく、義父からも「おまえ、マンション買わないのか。男としてどうなんだ」的なことを言われたりして未練タラタラでした。上昇してしまって手が出ない不動産情報をチェックしたりしてましたね。幸い、妻は私の考えに賛同してくれていたので妻からのプレッシャーはありませんでしたが。

諦めきれたのは以下のような話が出てきたからです。

・当時、5%の頭金だけで不動産購入が出来たのだが5%の頭金すら払えない人たちが頭金とする資金をもちよって不動産を購入している

→ 典型的なバブルの兆候です。

・インフレがきつくなってきたから(インフレ耐性のある)不動産価格は下がらない。またマンションを建設するコストが上昇しているから、デベロッパーは安くでマンションを売らず、したがって不動産価格は下がらない。

→ 価格は需給バランスで決まります。インフレ率やコストで決まるわけではありません。

など、人々が不動産価格はまだまだ上昇すると信じて疑わないからこその行動や言動が増えてきたのです。バブルの段階でいう最後のほう、ユーフォリアを目の前で見たからこそ諦めました。

現在、不動産価格は少しずつですが下がりつつあります。

3. ちょこちょこ事業投資

自分の住む不動産は「雨露をしのげる」以上の効用をもたらしません。要するに買い物としては精神的な充足感などポジティブな効用をもたらすかもしれませんが投資としては失格なんです。

では手元にあるキャッシュをどうするか、ということで出た答えは「ちょこちょこ事業投資」でした。僕の仕事、ファイナンシャル・アドバイザーはサービス業ですが販売する商品は主に投資信託。すなわち事業の集合体です。

なのに事業を一つも知らずにファイナンシャル・アドバイザーを名乗っているのがなんだか滑稽なように思えてきて、そのころ強烈に直接投資、大げさに言うとプライベート・エクイティ投資をしたくなりました。

一人でやるのも何なので、お客様や友達と「面白い事業案件」を発掘し吟味しては500万円や1,000万円を投げてみて事業投資の中身を株主の立場から見るチャンスを得ました。

現在、同時並行で異なる業種で7つの事業に投資してます。大きなリターンのあるものもあれば、残念ながら事業資金が尽きてしまって追加投資の必要なものもあります。何より売上のあがる現場を見ることができ、マーケティングのやり方や会計的な知識も同時に得られ確実にファイナンシャル・アドバイザーとしての知見が広がったと思います。

不動産を買っても得られる知識や経験なんてたかが知れています。せっかくオカネを使うのだから、おもしろい経験をしたいんです。

4. 結局、香港不動産は買うのか

正直どうでも良くなってきた…というのが本音です。

前述の一国一城プレミアムはないままです。購入した家を見せびらかしたい衝動もありません。自宅をカフェ風に改装したいというオシャレな欲求もありません。「ようやく一人前の男になったな」と義父に言われたいという気持ちはありますが、何がなんでもそう言われたいというほどではありません。

あるのは家計のバランス・シートにこの騰落の高い暴れん坊な資産がどっかり鎮座してしまうことへの拒否感です。資産はダイバーシファイするべき、と日頃お客様に言いながらどの口がそれを言っているんだ、と言われたらひとたまりもありません。

なので以前は頭金7割で購入しようとしてましたが今後もし購入するとすれば頭金10割、すなわちフルキャッシュです。そしてなおかつ自宅が家計の資産の半分以下になるようにしたいです。

購入したら、必ずこのブログでご報告します!

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