Ogura Manabu
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中国で別の事業にCFOとして参画しているが、1年に1度従業員に過去1年の自分の働きぶりの自己評価、そしてそれをベースとした昇給や昇進、また今後1年の働き方やコミットメントを一人ひとりに聞いていくという作業に参加したときのこと。ボスは38歳、中国人、女性。従業員は31歳、男性、独身。

ボス : この1年は君は実に献身的に働いてくれました。去年の10月から始まったプロジェクトは、あなたの指導力のおかげで予定よりも3ヶ月も早く終わりました。

従業員 : ありがとうございます。自分は自分の仕事をしたまでです。

ボス : 今後も会社のために頑張って欲しいし、今は副総経理(副社長)という立場で頑張ってもらっているが今後は総経理(社長)に昇格してもらいたいと思う。もちろん、基本給も毎月1,500元アップする。

従業員 : 総経理ですか? えっと、今の副総経理のままではダメでしょうか?

ボス : 総経理は適任がいなかったから今はたまたま私が時限付きでやっていただけです。私は他事業の立ちあげで忙しくなるから、君にぜひ総経理を任せたい。

従業員 : ちょっと考えさせてもらえますか?

ボス : 考える… それはいいけど、総経理になったとしても今の仕事の忙しさは変わらないし、そもそも君は現場の責任者だったから型紙はともかく仕事の内容は既にこの1年総経理だったのだよ。

従業員 : 責任が増えるのではないですか?

ボス : 確かに、総経理という立場だといろいろと面倒なことは起こるね。副総経理だと自分で処理できないことは「総経理に聞いて下さい」と言えるけれど、総経理だと自分で判断しなければいけない場面も多くなる。

従業員 : ですよね…

ボス : ただ今まで私が総経理として副総経理であるあなたの立場をフォローしてきたように、今後あなたが総経理になったとしても私は変わらずフォローします。それに総経理なれば自分で決められる裁量が増えるから、むしろ嬉しいのではないの?

従業員 : はい… でもやはり一度考えさせて下さい。


ボスによると、こういう例は中国では少なくないらしい。能力も高く、ヤル気もある。会社への忠誠心も高い。同年代の他の従業員と比べると、どう控えめにみても頭ひとつふたつ抜きん出ている。しかしなぜか昇進したがらない。何か漠然とした「責任」に対する不安があるらしく、それを負いたくないらしい。

総経理にするにはふさわしい人材なのだが、本人は嫌がる。そして総経理になりたがる山っ気のある、しかし能力のない人に潰されてしまったりするらしい。

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