香港金融譚

主に世界の金融や経済情報についてのブログです。
«Prev || 1 · 2 · 3 · 4 · 5 ·... | | Next»
2012/02/02 23:06


中国・広東省で開催されているビジネスフォーラム。ドイツのメルケル首相がヨーロッパの債務危機を食い止めるため中国に支援を求めにきている。温家宝首相がこれに対応し、ビジネスフォーラムの話題よりもむしろ中国の欧州に対する対応に注目が集まっている。

温家宝首相は中国はヨーロッパに対しての金融支援を強めていくつもりだとした上で、ヨーロッパで高まる反中感情に配慮したのか声明で

「中国はヨーロッパを買うつもりはないし、その能力もない」

と発言した。字義通り国を購入することはできない。しかしヨーロッパの会社を買う、ヨーロッパをのエネルギーを買う、ヨーロッパの湾港などのインフラ施設を買う… などの行為を通じて中国がヨーロッパにおける発言権を強めることはできる。

政治的に繊細な問題ゆえ、中国も細心の注意を払っていることが伺える。ここ香港にいても、中国の企業買いは見えにくい。中国政府自身が購入主体となるわけではないから、いわゆる「フロント企業」を使う。設立はロンドン、マネジメントチームは全員欧米人のプライベートエクイティ・ファンドの金主が中国だったりする。彼らは技術の吸収が目的だからターゲット企業の価値が上がらなくても一向にかまわないのだ。

フロント企業としてヨーロッパで活動している企業はヨーロッパ自身が思うよりもずっと多いはず。
2012/02/01 23:42
1

香港政府は2月1日、国の予算案を発表すると共に香港の国内成長は2011年度の5%から1-3%へ鈍化するとして様々な減税政策を打ち出した。

- 電気代として、1800香港ドルを各家庭に支給
- 低所得者向け公団住宅の家賃を2ヶ月分減免
- 個人の所得税を最高12,000香港ドル減免


最初の電気代1,800香港ドルは現金で手渡されるのではなく、各家庭の電気代の請求から1,800香港ドル分引かれる。ちなみに私の自宅では電気代は毎月500香港ドルくらいだから、3ヶ月分以上電気代がタダとなる。こういった光熱費のサポートは地味なオトク感がある。

また99%/1%運動に代表されるような格差問題も香港では主要政治テーマの一つ。とはいっても香港の政治は北京が決定するから香港市民は政治にはあまり関心はないが、低所得者層に対するいたわりがない訳ではない。しかも香港市民の半数は政府が建設した公団住宅に住んでいるから、それらの層が政治的に爆発すると金融都市香港の名前に傷がつく。

所得税の標準税率は15%だが扶養手当などいろいろつくので年収25万香港ドルくらいまではほぼ無税だ。これまで何度も個人所得税を申告した。所得税は天引きではなく確定申告が必要なのである。4年前の申告時に申告日の前後忙しくて所得税の申告を大雑把にしたが何のお咎めもなかった。香港の税務署はあまり細かい部分をチェックはしていないのだろう。

ちなみに香港は2011年度は国として6600億円の黒字で格付は最高のAAAだ。昨年の秋からは香港国民に対して一人6,000香港ドルをばらまいている。高成長の時にはがっつり税金とって、低成長時にばらまき成長を維持する。香港は金融都市だが香港ドルが外国に大量に流出することはないのでこういった政策が効果をあげるのだろう。
2012/01/31 23:04
1

中国は政府として、ヨーロッパ債務危機問題の解決ファンドに多額の出資をすることを検討している。ドイツのメルケル首相と温家宝首相は北京市で会談、メルケル首相は中国の巨額の外貨準備をアテにし中国はヨーロッパでの中国の経済活動の拡大を見返りとして要求している(とされる)。

中国が資金拠出をヨーロッパから要求されたのは、昨年の10月。しかし当時はまだ不安定要素が多すぎて中国政府としてもあまり大きな動きは出来なかった。しかし1月30日ユーロ圏の財政統合が決定した。そしてギリシャは国家主権の一部である予算編成権を剥奪されそうな勢いだ(ギリシャは強硬に反対しているが、いずれこの条件は呑まされる)。

ギリシャが救済国サンプルとなれば、あとのポルトガルやスペインもギリシャ救済方式を採用されるだろう。ただギリシャが救済される、という観測が強まれば長期金利も下落し他の国の国債問題は目立たなくなってくる。そういう状態までいくと「ユーロ危機は解決した」といえるだろう。

しかしユーロ危機が解決してもそれで成長が続く訳ではない。むしろ今回ドイツが弱小ユーロ諸国を助けたことで政府の緊縮財政がますます弱いユーロを生み出すことになろう。ユーロが瓦解せずともユーロ圏の成長は今後3-4年はほぼゼロだ。

このゼロ成長圏にカネを出すとコミットできるのは今は中国しかない... 通貨はともかく、政治的に中国は覇権を握っていきそうだ。
2012/01/30 23:56
結局、ギリシャの解決策は出てきてない。すなわち国債保有者との間での債務50%減の合意という。ギリシャは3月20日に145億ユーロの借り換えを迎える。そしてギリシャの国庫には145億ユーロもカネがない。国債保有者が"自発的に"借金を棒引きしなければ、ECBやIMFに支援を求めることになる。

2009年、ギリシャの問題が発覚してからもう3年が経過しようとしている。2010年、少し景気が浮揚した感覚があったからこそ国債問題は隠れてしまっていた。2009年と現在とを比較すれば、状況は改善していないしむしろ悪くなっている。

2009年と比較して2011年度はGDP規模は13%収縮している。2012年に6%の収縮、2013年には5%の収縮が見込まれている。そしてこの数字すらも、楽観的だとされているので実際出てくる数字はどれくらい悪いものになるかは分からない。

ヨーロッパの誰もがギリシャはこのままフリーフォール状態となりいずれユーロを脱退する(しなければならない状態に追い込まれる)と考えている。この期に及んでギリシャ政府はドイツの言うことを聞かないし、競争力を取り戻すためにギリシャは何ができるか、みたいな建設的な議論も聞かれない。

外部から見ていれば、ギリシャが取るべき道は非常にはっきりしている。すなわち過酷な財政緊縮を推し進め公務員をカットし年金・医療費を削る。あまりに自明過ぎて「まさかそれを実行しないだろう」と思うくらいだが、ギリシャの政治家は人気取りのためにどういう判断をするかは全く未知数だ。

3月20日までに何らかの合意がなされなければ、ギリシャはデフォルトする。
2012/01/29 23:07


NYのグラウンドゼロに建設中のワンワールド・トレード・センター。

総工費380億ドルをかけているため、ドバイのバージュ・カリファや香港のIFC2タワーよりも賃料が高くなるという。バージュ・カリファの家賃は知らないが、香港のIFC2タワーのオフィス賃料は600平米で毎月1000万円前後だ。ちなみに、骨組みは強化コンクリートで頑丈に作るため飛行機が突っ込んできても倒れないらしい…

テロリストたちを擁護するつもりは毛頭ないし、いかなる主義主張があったとしても無辜の人間を殺りくして良いわけがないが、9/11の原因の一つがアメリカが主張するグローバル資本主義に対するアンチテーゼにあったとするとこの賃料はまさにアメリカの推し進めるグローバル資本主義の頂点にたった企業でしか払えない金額だ。9/11以降、外国に侵略されたことのないアメリカはワールド・トレード・センターの破壊により自らの自尊心を大きく傷つけられた。それを回復するために富の象徴である綺麗なオフィスビルを建設しようとすることは分からなくもない。

しかしちょっと待て。アメリカは市場を通じて富を最大化してきた。戦争で植民地にして搾取するよりも、市場を通じて搾取したほうがずっと手っ取り早い。しかもその市場には他の国々のマネーも集まるからさらに富を増大させる効率は高まる。

そういった市場を通じた富の増大に対しての嫌悪感がワールド・トレード・センターを破壊したのではなかったか。覇権国としての正しい振る舞い、低所得国と高所得国の所得の再配分、宗教の違いの相互理解などについて議論が深まらないまま同じようなビルがその規模を大きくして完成してしまうのはいかがなものか。
2012/01/28 23:34


香港のシャングリ・ラ・ホテルが最近、フカヒレ料理をメニューから消したらしい。

フカヒレについては、サメのその乱獲による急激な減少が以前から問題視されてきた。漁師はサメを釣り上げ、背中のヒレを切って海に戻してしまう。しかしサメにとっての背中のヒレはまっすぐ泳ぐために必要な部位。それを失ったサメはうまく泳げず死んでいく。

人間の舌を喜ばせるために、果たしてその漁の仕方は正しいのか… という問題意識である。たしかにフカヒレのスープは確かにウマいが、それを今後一生食べられなくなったとしも個人的には全く問題ない。日本でフカヒレスープなんてほとんど口にしなかったので、日本のフカヒレ消費ペースから言うと一生分のフカヒレは既に食べたと思う。香港名物のフカヒレの乾物屋が消えてなくなるのは少し寂しいくらいだ。

ちなみに香港と中国で全世界のフカヒレ消費量の95%を占めるらしい。結婚式などお祝いの席ではフカヒレスープが必ずといっていいほど出てくる。フカヒレ=高級品であるから、もてなす側・主催者側のメンツがこのフカヒレスープに凝縮されていたりする。フカヒレという一部位を食べるためだけにサメの命を奪うのは可哀想… とは思うが、これは別にフカヒレに限ったことではない。全世界の貧困層に届けられる食料物資の40倍の量を食べ残すといわれる日本で育ったから、奪った命に申し訳なく思うような悪行はたくさんあるだろうなぁ…

フカヒレがメニューから消えない限り僕はフカヒレを食べ続けていたので、このような取り組みは大賛成だ。ちなみに他の高級ホテル、たとえばペニンシュラホテルでも既にフカヒレ関連メニューはないそうだ。
2012/01/27 23:42
1
昨年12月8日のもの。



30日からブリュッセルで開催されるEUサミットでは公には、ヨーロッパ安定機構(ESM)の今後のスケジュールやEU圏の雇用問題&経済成長をどうするかが話し合われることになっている。ただ週末にまとまりそうなギリシャの借金50%棒引き案の合意如何によってはギリシャ問題が大きく取り上げられることになる。

ギリシャが民間セクターと借金棒引き案について話しあう期限は、いちおう3月20日ということになっている。しかしここらで改善する兆しを市場にアピールしておかないと事態はますます悪化するばかりである。早めに「ギリシャは良くなってます」と言うことが大切だ。

しかも雇用問題&経済成長は消費が減退している今、政府支出によるカンフル注射でしか達成し得ない。とすると、むしろ今から「どれだけ緊縮財政を敷くか」ということが話し合われなければならない中で有効な政府支出を話し合い各国で合意に至るのは至難の業である。差し迫ったギリシャの話題をメインにして時間を稼いだほうが、大統領選挙を控えるサルコジにとっても都合がよい。


ところで、現在の株高を支えるセンチメントに変化が現れるとすればやはりそれはユーロ発となると考えている。1月、イタリアとスペインの国債入札は好調だった。株高の原因は米国企業の決算が良かったことが牽引役となっているが、ユーロの構造的問題は解決していない。もしユーロ発で市場センチメントがまた大きく変化するとすれば…

2月15日。ユーロ圏ならびにドイツ・フランスのGDP速報
最大のお得意様である中国の国内消費が伸び悩んでいたことから、あまり良い数字は期待できそうにない。

2月29日-3月2日。4650億ユーロ分のイタリア国債が満期を迎える
投資家としての銀行がリスク資産を今後積み増していくとは考えにくい。彼らが国債市場に戻ってこなければ、金利は上昇する。ECBは今のところFRBのような国債直接購入はしない構えだが、「するの?」「しないの?」でまた市況は大きく揺れる。

3月20日。1450億ユーロ分のギリシャ国債が満期
借り換えを行えるくらい市場が安定していればいいのだが、そうでなければ… ECBが思い切った金融政策を採らない限り、ギリシャ国債のCDSのトリガーが引かれ… 以下リーマンショック以降と同文。
2012/01/26 23:10
1

チャールズ・ダララ氏(左)



今週末にも合意に至るであろうことが予想されている、ギリシャの債務問題。銀行やファンドなどの民間の債権者が50%の棒引きには同意出来ても、その棒引きと引換えに得る債券利回りについて4%を主張し、3.5%を主張するギリシャ側とこの0.5%のギャップで同意に至らす今日まで問題が持ち越されてきた。

ギリシャ側としては、2020年までに国債発行額を現在のGDP比160%から120%まで40%減らしたいと考えている。この0.5%の差は将来的に国債発行額のGDP比で2.5%の違いとなってくる。40%のうちの2.5%を交渉により減らすことが出来るのであれば、それはギリギリまで交渉するだろう。

国際金融機関連盟の理事長であるチャールズ・ダララは先週、民間債権者にとって大きな損失となる利回りを提示した。それがどのような数字であるかはまだ公表されていない。

ただ、仮に低利回りを民間債権者が受け入れたとしても今後ギリシャがその目標とする国債発行額GDP比120%を達成し、今までの放漫国家経営から脱すればその市場における債券利回りは低下し、今回低利回りを受け入れた民間債権者がリターンを得る可能性はある。

そもそもユーロという通貨はドイツやフランスのような強い国とギリシャやポルトガルなどの弱い国とを平均されている。すなわち、ドイツやフランスにとっては相対的にユーロは割安でギリシャにしてみればユーロは割高なのだ。

それがドイツ・フランスのユーロ二強を更に加速させ、貧乏国を更に貧乏にさせている。ユーロの構造的な問題はユーロ発足時から続いてきた。ドイツやフランスがギリシャを救わねばならない理由はここにある。

現在、ギリギリの話し合いがされているという。ただまた話し合いがご破算になれば、好調な株式市場に冷や水を浴びせる可能性がある。
2012/01/25 23:57
1

火曜日の夜に、オバマ大統領が演説内で言った言葉。

我々の(厳しい情勢に対する)団結力は一段と強くなっている。雇用主はスキルある労働者をいち早く見つけることが可能となっており、生産活動も活発だ

そして水曜日の夜、連銀議長のバーナンキがFOMC内で発言した内容。

FOMCとしては市況の先行きに対する味方を一段と弱含み、回復力は依然として頼りない。従って2014年終盤までは低金利を据え置く。また連銀による国債買取も選択肢に入れる

当然、オバマ大統領は再選を目指しているのでより大きな希望を持たせるコメントが必要だ。しかも皮肉なことに、連銀が「景気は思ったように浮揚しない」と超緩和政策を取ってくれるおかげで株式市場は好調。金融機関で働いていない、市場のからくりに頓着しない大多数の有権者には「株価も上昇してるし、景気は良くなっているんじゃないか」と思わせる。

QEがどのような効果をもたらしたか、あるいはもたらさなかったかというと、

- 株価が一時的に上昇した
- コモディティ関係が上昇した
- インフレをもたらした
- 新興国市場に住宅バブルをもたらした
- QE中、失業率は改善しなかった。QE後も失業率は大きく改善していない
- 会社は債務を返済し貯蓄を多くさせようとするため、新しい借金しない

日本が経験した状態によく似ているなと思うのが、新しい資金需要がない間は景気回復が難しく、中央銀行の財政政策は無駄玉になってしまう点である。しかもアメリカは日本と違ってアメリカからの資金流出が大きい。

いわゆる「グローバル・スタンダード」を世界中に押し付けてきた米国は、そのしっぺ返しを受けているような感じだ。「カネは国境をまたぐのが良い」という価値観のもと、アメリカから巨額のマネーが新興市場に流れ込んだ。もしQEを実施してその資金が国内での事業創出・雇用創出に使われずにコモディティ投資や新興市場投資に流れているとすれば、アメリカ経済自体を疲弊させ、かつ新興国はバブルの生成・崩壊で疲弊する。

所得水準は既に2000年から10%程度下落し、人々はファミレスよりもファーストフード店に足を運ぶ。消費者物価指数に現れないデフレ的な傾向が続くとすれば、日本が通ってきた道をアメリカは歩むことになる。
2012/01/24 23:51


オバマ大統領がアメリカ経済をコントロールしている訳ではない。したがってオバマ大統領が米国民経済をすぐに向上させたりすることは出来ない。しかし、大多数の人たちが自分たちの生活が良くなるのも悪くなるのもオバマ大統領の責任だと考えている。

1月の調査によると、アメリカ国民のうち

37%が経済は改善している、と回答。1ヶ月前は30%。
45%がオバマ大統領は経済をコントロールしている、と回答。1ヶ月前は37%。
37%が今後12ヶ月間の間に景気は良くなるだろう、と回答。1ヶ月前は30%

この手の国民調査はあくまで現在の景況感を表しており、今後12ヶ月間の予想指数としては全くアテにはならない。しかし選挙年度においては実際にどうなるかは問題ではなく今現在国民がそう信じているということこそが大事なのだ。

オバマ大統領が再び当選するとすると、金融機関にはかなり厳しい道が待っていると伺える。ビデオの4分30秒あたりから、

今まではウォール街が自分たちでルールを決めていたが、今後はそのようなことは許さない。私たちが通した法案では、金融機関が本来あるべきものになるように規定する。すなわち、アントレプレナーにリスク資金を拠出し、大学に行く子どもがいたり家を購入しようとしている家庭、小さなビジネスを始めようとしている人にカネを貸す、という。

自己資金の何十倍もレバレッジ投資をしてきた投資銀行にとっては耳のイタイ話だ。景気の回復段階では金融機関関連は「買い」であるが、オバマ大統領の再選がもし濃厚になってきたら、とても手が出そうにない。
«Prev || 1 · 2 · 3 · 4 · 5 ·... | | Next»